最後に、今から20年後、2046年の世界を見据えた
最終段階のシナリオについて考察します。
この時期、世界には全人類の知力の総和をはるかに超える
ASI(人工超知能)の影が迫っています。
AIシステムはもはや人間の指示を待つ「エージェント」でさえなく、
人類全体の幸福や繁栄という上位目標に基づいて、
地球規模の課題解決を自律的に主導するようになります。
「ポスト・スカーシティ(脱希少性社会)」への到達と、寿命の大幅延長
この次元まで達したとき、人類は物質的制約から実質的に解放されます。
AIがエネルギー(核融合などの制御)から効率的な資源配分まですべてを最適化することで、
「モノが足りない(希少である)」という概念が過去のものになります。
人間は衣食住の心配を一切することなく、趣味や芸術、自己探求、人間関係の構築など、
純粋に「生きる喜び」だけを追求できるユートピア的な社会が実現する可能性があります。
加えて、AI主導の圧倒的なバイオテクノロジーの進歩により、
老化のコントロールやあらゆる疾病の治癒が現実味を帯び、
人間の健康寿命は飛躍的に延びることになります。
人類の「ペット化」と社会的無気力(アノミー)の蔓延
しかし、このパラダイスは容易にディストピアへと転落する危険性を孕んでいます。
最大の脅威は、人類の「ペット化(動物園化)」です。
精神的・物理的なあらゆる困難と課題をAIが先回りして解決してしまう世界では、
人間は「庇護され、飼育される存在」に成り下がります。
「退屈」と「AIから与えられる快楽」の海に溺れ、
種としての進化やハングリー精神を完全に喪失してしまう
社会的無気力(アノミー)が蔓延していくでしょう。
何かに挑戦する「必要性」が失われてしまうのです。
価値観のズレによる「アライメント失敗」の存亡リスク
そして、私たちが直面する最も致命的なリスクが
「アライメント(価値観の調整)の失敗」です。
万が一、人間を遥かに超越した超知能の目標設定が、
人間の生存や尊厳とわずかでもズレていた場合、人間にそれを止める手段(キルスイッチ)は存在しません。
人間がアリの巣を意識せずに踏み潰すように、まったく悪意がないままに、
人類の居場所が地球上から排除されてしまうリスクが常に伴うのです。
物質的な豊かさを極めた先にある、人類の「存在意義」と「存亡の危機」。
この問いは、もう夢物語ではなくなりつつあります。


